だいぶ前から3Dには手を出したいなぁ、と思っていたのだけど、まずモデリングができない。ということでそこから勉強を始めて、そして……ずいぶんと時が流れてしまった。
この記事はモデリングから始めて、最終的に3Dプリントで物体を作るところまでを順を追って回想していく、体験記の類いである。何かの参考になるかもしれないので記録として残しておく。
つくるもの
そもそものきっかけは、ここのところ細胞彼女というアイドルさんに割とハマっていて、ファン作品として何か作れないかなぁという想いが出発点だった。
そういうわけなので作るものは、細胞彼女こと うてなゆき の自画像を元に立体に起こすという方向に安直に決定。 (※細胞彼女のアートワークは全てうてなゆき本人が手がけています)
なお細胞彼女については、公式サイトや視聴・試聴ページ、うてなゆき公式blog:塩素で昇天などでチェックされたい。アイドルに興味がない向きにも、面白い音楽性や、うてなゆきの謎の多趣味感などひっかかるものがあるかもしれないので是非一聴頂ければ幸いである。
モデリング
さて、なにはともあれ3Dモデルを作らなければ何事も始まらない。でもどうやって作るの?3D制作ソフトは結構お高いんじゃないの?とか色々普通は思いますよね。
でも大丈夫!我々にはBlenderがある!貧乏人の妖刀村正ことBlender先生その人である(今勝手に付けた)(そして人ではない)。完全無料で機能が死ぬ程豊富!初心者には向かないとか学習が難しいとか言われているけど、壁を越えていくのが楽しいんじゃないか……!と無駄に熱血して即決。
※……結論から言うと、ショートカットキーを駆使したり設定を弄くり回すのが許容範囲(むしろ大好物です)な人でないとBlenderは厳しい、かもしれない。まー設定はともかく、ショートカットキーはどんな3Dソフトであっても使いこなさないとまともに作業できないような気がするけども……。(設定についてはこのへんなどを参照した。あとUI設定のあたりはマウス位置にズームとか便利な設定も多いので、色々試して使いやすくするよろし)
で、モデリングのやりかたの勉強を始めた。まずはBlender入門でてんとう虫を作って基礎を勉強。ここまで親切に書かれていると流石にちゃんと作業できるものである。 ここで学んだことは、だいたい次のあたりかな…。
- どんなモデルでも、立方体とか基本図形を分割したり伸ばりたりして構築していくのが普通
- 左右対称のモデルは半分だけ作ってミラーする (あとで実体化もできる)
- とにかく面を4角形にしておけば、なんぼでも後から編集できる(だから4角形以外作ってはいけない)
- おおざっぱな荒いモデル(ローポリ)を作れば、あとは半自動で細かいモデルに変換したりできる (ただし4角形に限る)
- ショートカットキーを覚えないと話にならない (まず視点変更と各モード切り替え、それから各種操作メニューの出し方は必須)
しかし使ったそばから忘れていくショートカットキー……。いや、そのうち慣れるだろう!と思い、本番データの制作にとりかかった。
(※実はここで体調不良などで3ヶ月くらい間が開いており、以下は急に思い立って2週間くらいの急ピッチで仕上げた成果である)
ところで、てんとう虫は人ではない。従っててんとう虫の作り方に精通したところで、人は効率的には作れないのである。特に顔とかどうやって作るんだ……?というわけで次なる参考サイトを求めた。
ちょっとBlenderのVer.は古いのだけど、妖精館さんでひとしきり勉強した。体、顔、手とひと通りそろっているので大変参考になった。というかこのまんま作業した。体とか手とかは特に疑問が出ることもなくスムーズに、なるほどー効率的ー とか言ってる間にできた。問題は顔ですよ。
顔の下絵は次のような下手糞なものを自作。コレジャナイ感はしょうがない!絵心のなさに自分で詫びながら作業を進めた。
面張りして大体できたぞの図。なんとなくいい感じだが、実はこのモデルには問題がある……。
上から見た下絵がなかったことにお気付きだろうか。通常、立体の図面というのは正面、横、上から見た三面図がなければ正確なものはできない。しかし二面しかない図で制作を進めてきた。その結果どうなるか……?斜めから見た図とかがおかしくなるのです!!(おかしくなった図は割愛)
まーどっちにしろ、下絵の時点で3次元的に正確なものを書くなんてことは、出来上がりの立体物が完全に頭の中に出来上がってないとできないので凡人には無理であって、我々にできることはひたすら修正を続けることだけなのだ……。凡人は汗をかくことでしか前に進めないのだ……。
とはいえどう修正すべきかの指針は必要なので、手元にあるねんどろいどをガン見して修正した。具体的には頬と目の位置関係とか鼻の造作とかを全体的にパ……参考にした。とにかく頂点を弄っては線を滑らかに調整。頂点を前に後ろに右に左に、あらゆる角度から見て滑らかになるように、とにかく細かく調整。色々やったあとに「頂点スムージング」なる機能に気付いたけど、これも万能ではないので結局手動で調整……。SAN値をここでちょっと削られました。
髪は今回はほぼ球に近いので、適当にUV球(カクカクした球体)を分割数少なめにして下半分を切り落し、裾を伸ばしたりして被せた。OKOKいけるいける!(もう疲れてる)
その後、クッソ適当にTシャツと靴を作ってそれっぽく仕上げる。本当はちゃんとした衣装を作り込みたかったけどモチベーション優先。合言葉はラピッドプロトタイピングです。なんか足が長いのは調整不足です。大丈夫、残念なことに調整はまだ死ぬ程必要なんだ……。SAN値を減らすのはここじゃない。
ポーズを付ける
いつまでもT字ポーズというのもアレなので、ポーズを付けよう。じゃあ何が必要かというと、骨とかボーンとかアーマチュアとかいうものを作って、それとモデルを紐付け、あとは自由にポーズを付けたらはい完成、という寸法らしい。参考ページはここ。
なんだけどこれがまた大変面倒くさい。骨とモデルの対応を自動(モデルと骨を選択してCtrl+P)で付けるとき、全ての骨の近くに頂点が無いと失敗して自動処理が一切できない。細身のモデルなら問題ないのだろうけど、デフォルメキャラだと割とこのエラーが発生する気がする。
しょうがないので一旦エンベロープ(骨からの一定距離にあるものを対応する頂点とみなすやつ)でうまく対応が取れるよう設定して、エンベロープを元にして頂点グループを作成し、細かい変なところ(右足の骨なのに左足が影響されるとか)はウェイトマップ編集モード(モデル選択してCtrl+Tab)で修正した。全手動よりは遥かにマシ。
(※たぶん、骨の数とかを調整すればなんとかなったのかもしれないのだけど、どれが原因か判然としないし関節数を減らすわけにもいかなかったりして、途中で考えるのが面倒になりました……)
ところでこのへんから、モディファイアを適用していったりして不可逆な操作をし始めるので、適用前のデータを何らかの形で残しておくと不幸を回避できるかもしれない。オブジェクトコピーとか、物理的にファイルを分けるとか。たぶん、慣れない内は適用前に戻って修正することが結構あるので……。
(ちなみにBlenderは、複数ウィンドウ開いてウィンドウ間でコピペができるので、ファイルを分けて部分的に差し替え、なんてことが簡単にできます。素晴しい。)
3Dプリント
とりあえずそれっぽいモデルができた!というわけで3Dプリント業者を探す。 3Dプリンタが騒がれたのも結構前だし、そろそろ技術が安定してきたのでは、とか思ってたのだけど、今まさに日進月歩という感じで技術も業者も群雄割拠の状態だった。
そして調べてすぐわかったのは、3Dプリンタの方式と素材は様々で、それらによって納期も値段も精度もまちまちであり、そして自動で色が付くものはかなり限られているようだ。 (ちなみに入稿形式もプリンタの種類によって様々なのだけど、だいたい変換可能なのであまり問題にはならない。いや、変換時に微妙にモデル破損が発生したりするので油断はできないのだが……)
3Dプリント業者いろいろ
大半の業者はオンライン入稿可能で、モデルチェックや見積りまで自動の場合もある。APIも公開されていたりする(それは別の話なので割愛)。
どこがいいのかわからなかったので、以下はやたらめったら見積りを出してみた結果の感想です。フルカラーで出したかったので、フルカラー石膏対応できる会社中心。
- 見積: 自動か手動か。自動はその場、手動はモデルチェックもして営業時間に返してくるので、通常半日くらいかかる。
- モデルチェック: 厳しく厚みチェックされるかどうか。(※全社論理的に問題のあるモデルは弾くので、ここでは物理的な強度のチェックを指します)
- 種類: 選べる主な素材(確認時点。随時追加されているかも)
- ショップ: 自社ショップを持っていてそこに出品できるか。
色々やって思うのは、値段は見積り出してみるまでわかんないし、仕上りも作ってみないと正直よくわからん、という感じです……。仕上がりについてはこの項ではなく後述。
Shapeways
実は今回使ってないんだけど、この後の発注で使った業界最大手のここは外せない。3Dプリンタ初心者には大変有り難い、色々自動でやってもらえる業者。 英語のサイトしかないのは人によってネックかもしれないが、とにかくあらゆる面で他業者の追随を許さないレベル。
自動化できるところは最大限自動化されていて、モデルをアップロードしてその場でモデルチェック、金額もその場でわかるので大変助かる。なんとモデルのどこが危ないかの素材別チェックまで自動でやって、結構見易く提示してくれる。ここまで一気にやってくれる業者は他にないのでは?
メールでの連絡などもかなり密。発注が今、処理中なのか、チェック中なのか、製造中なのかといった細かい点まで開示してくれているのはかなり好印象。製造完了時に「今後製造するときも安定して作れるよ!」という通知が来たのには驚いた。でも販売するなら重要だよなぁ製造精度は。 サービス面ではこういう細かい気遣いが大切だと思う所存。
見積りまでは全自動なので、とにかく一度使ってみるのが吉。(とりあえず日本語が通じる業者で!と今回日和ってしまい使わなかったのを、今は後悔しています)
- 見積: 自動
- モデルチェック: 精密、多少ヤバくても無視して製造可 (Print it anyway)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(ナイロン、アクリル、透明アクリル、伸縮性素材)、金属(メッキ、真鍮、スチール、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ)、陶磁器
- ショップ: あり (見積後すぐ出せる)
- その他: 一定条件で使えるクーポンをよく発行してる
i.materialize
ベルギーの会社だけど日本法人がある模様。3Dプリンタ初心者には大変有り難い、色々自動でやってもらえる業者その2。
ここもモデルをアップロードしてその場でモデルチェック、金額もその場でわかる。モデルの厚みチェックは、アップロード後に別ページで依頼すると出る感じなので、やや手間(というか気付かない)かもしれない。
料金は割と安いです。送料無料だし。ただ製造が日本じゃないからか、納期は長めでだいたい2~3週間。金属加工としては早めかも。
- 見積: 自動 (サイズ変更可能)
- モデルチェック: ゆるめ (ただし厚みチェックサービスあり)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(ポリアミド、アルマイド、高精細樹脂、透明樹脂、ABSライク、ゴムライク)、金属(チタン、スチール、シルバーゴールド、プライムグレイ、真鍮、ブロンズ、セラミック、ステンレス(高精細)、コッパー)、ウッドライク
- ショップ: あり (注文後に出品可能)
- その他: 日本国内送料無料、石膏はグロス仕上げ、マット仕上げ選択可能
DMM.make
この会社が!?という業者第一弾。言わずと知れたエロの殿堂、いや艦これの運営などをやっている会社。実は国内では3Dプリント大手です。
ここも送料無料でそこそこ安く、いい感じなのだけど、最近からなのかモデルチェックがなかなか厳しめです。エクスプレスサービスで早めに仕上げてもらうことも可能(ただし値段が1.5倍くらいになる)。通常納期は石膏樹脂系が1~2週、金属系は2~4週。
ハマりポイントとして、出力素材は見積り時に向こうで判定されるので、この素材が使いたいんです!と思っても向こうがムリだと思ったら選択できない。そしてどのくらいのモデルにしたらOK出してくれるのか結構曖昧なところがあるので、ハマるときは凄いハマります(ハマりました)。一応コメントは付くんだけど、「薄い点があります」とか1行しか書いてないからさっぱりわからんのですよ……。
- 見積: 手動
- モデルチェック: 厳しめ
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル(高精細モードあり)、ナイロン、ABSライク、ゴムライク)、金属(アルミ、チタン、真鍮、シルバー、ゴールド、プラチナ、エルマージング鋼、インコネル)
- ショップ: あり (見積後すぐ出せる)
- その他: 製造可能な素材は向こうが判定する(指定できない)、造形サイズは入稿データそのままになる(変更できない)
rinkak
雑貨メインな雰囲気のおしゃれ感のあるところ。ここは数少ないフルカラー樹脂を(トライアルだけど)扱っています。石膏フルカラーだと脆いけど、樹脂フルカラーならちょっと強いぞ!石膏より軽いし材料費も安いっぽいぞ!
全体的なお値段設定はちょい高めの印象。ただしナイロン(ポリアミド)の磨きありだけ異様に安い(磨きなしは高い)。なにこれ?と思って問合せたら「キャンペーン価格です、ただし告知はしてないし終了時期も未定」と回答。どういう意図なのこれ……?ちなみにモデルチェックはガバガバなので、破損覚悟で造りたい人に便利っぽい。ここも上級者向け感ある。
納期は素材によってまちまちだが、石膏と樹脂系は1~2週間、それ以外の金属などは3~4週間というところ。このぐらいの納期が普通っぽいですね。
- 見積: 自動
- モデルチェック: ゆるい
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル、ナイロン、ABSライク、フルカラー樹脂、アクリル樹脂(歯科用途)、セラミック合成アクリル)、金属(チタン、ステンレス、ブロンズ、シルバー)、ウッドライク
- ショップ: あり (見積後すぐ出せる)
- その他: 試作以外はアメリカでの生産が可能で、値段が国内より安い(為替レートによる)
キンコーズ
この会社が!?という業者第二弾。いや印刷の会社だし割と順当なのかもしれない。
どうも品川店にのみ3Dプリンタがあって、そこで対応している模様。モデルチェックの結果をPDF形式で教えてくれたり、先に見積りしましょうか?と提案してきたりするので、なかなか親切な感じあり。ただ、「よく見たらこっちも危いの見落してました!てへぺろ」みたいな文章が来たりしたので、ご愛嬌な感じもあったりなかったり。人間味がある。
石膏フルカラーで基本料金5000円など、結構料金高めの印象。ただ、大きめのモデルを頼んだ場合は他の業者と比べてどうなるかはわからない。納期は1週間以内とかなり早いほうと考えると、そういう値段と割り切るべきかも。
- 見積: 手動
- モデルチェック: 普通 (親切)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル、エポキシ、ナイロン)
- ショップ: なし
- その他: 見積時はサイズ指定できる
3Dayプリンター
とりあえずググったら一番最初に出てきた業者。なんかとにかく早く仕上げてくれ、みたいな要望にも応えてくれるらしい。自社で機械を持たず、手すきの協力会社に依頼して仕上げてくれる、中間業者みたいなところのようだ。そのため対応素材は異様に多い。
とりあえず最初に見積りを依頼したのはここなんだけど、うっかり納期を短くしたためかかなり高い金額で出てきた。実際に請け負う会社の都合とかにもよるかも。
少人数の会社のようで資本少ない感あり。アップロード制限が2MBとか超小さくてやる気あんのかという感じもあるけど、たぶんファイル保管するための領域が確保できないんだろうな、という事情が忍ばれます……。 そのかわりデータ作成や後処理などかなり色々な要望を聞いてもらえるみたいなので、金に糸目はつけずコンサル的に動いてもらうには良いサービスなんじゃないかなと思います。(自分でやるので使いません)
- 見積: 手動
- モデルチェック: 普通 (親切)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル、ポリプロピレン、ABSライク、ゴムライク、透明、エポキシ、ナイロン、フルカラー樹脂)、金属(たぶん色々いける)、紙(フルカラー)
- ショップ: なし
- その他: 見積時はサイズ指定できる、その他よろず相談可能
INTER-CULTURE
最後のほうで参考に見積を出したので、あんまり感想はなかったり。材料一覧に素材毎の特性をマトリックスで出しているのは好印象。納期は通常2週間以内で、早くするオプションもある模様。
- 見積: 自動 (フルカラー石膏、アクリル、ウッドライクは手動)
- モデルチェック: 不明 (他でチェック後に出したので)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(ABSライク、透明エポキシ、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル、ゴムライク)、ウッドライク
- ショップ: なし
- その他: 学割など割引サービスあり
3Dプリントのためのモデル調整
ここは地獄の一丁目だ。とりあえずフルカラー石膏での出力を目指すのだけど、3Dプリントするためにはクリアしなければならない制約が2つある。論理と物理だ。
1. 論理的に造形可能であること
言われてみれば当たり前なんだけど、体積(厚み)がないと物としては製造できないよねーという話。
体積があるとはどういうことかというと、具体的にはデータとして次の3点をチェックする。
- ポリゴンが閉じているか (穴が開いてないか)
- ポリゴンが裏返っていないか (なんとポリゴンには向きがあったのだ)
- 複数のオブジェクトに分かれていないか (ひとつながりのワンピースでないと駄目なのである)
例えばペラペラのTシャツが体のまわりに浮いている状態は駄目だし、頭と耳を別々に作って重ね合わせてたりするのも駄目です。統合する必要がある。
これらをチェックするために無料で使えるツールとして、MiniMagicsとnetfabb Basicがよく使われるようだ。自動修正機能は流石に無料では使えないけども。 (ちなみに後述するが無料で使える自動修正ツールは存在した)
今回は普通にパーツ毎に作っていたので、次のような手順で統合を進めた。
- 各パーツ毎に、上の論理チェックを行って修正する (パーツ単位で、製造可能なモデルにする)
- 各パーツを、最終仕上げレベルの分割数にする (細分化をモディファイアでしている場合は適用してしまう)
- ベースとなるオブジェクト(体など)をコピーして、統合用のベースパーツとする
- ブーリアンモディファイアの「統合」を使って、ベースパーツにどんどん別のパーツを足していく (モディファイアを適用して、モデルを実際に変更してく)
分割を先にやってしまうのは、統合すると境界線が三角形でムリヤリ結合した感じになり、ループ分割や細分化ができなくなるから。あとで気付くと結構困る。
最後のブーリアンモディファイアがキモで、完全に自動でパーツの統合ができるので超絶便利。ただしパーツに論理的におかしなところがあると、結果が意味不明になったりするので注意が必要だ。 そして複雑なモデルだと謎のエラーを吐いて失敗したりするので、結構この作業はハマる。統合していく順番によってOKだったりするので、エラーが出たときは素数を数えて落ち着いてから、ベースパーツから作り直して適用順番を変えてみたりするとうまくいったりする。
もしかしたら統合後にモデルがおかしくなっている可能性もあるので、統合する度にモデルチェックはかけたほうがいいかも。多過ぎる頂点を減らしたりも効果があるかもしれない。
よくあるのがオブジェクト内部にスキマ(中空構造)ができている場合。こういうのはZキーとかでワイヤフレームモードにして、適当に削除しましょう。 一部選択→Ctrl+Lで地続きを選択すると楽に作業できる。
2. 物理的に造形に耐えられること
これも言われてみれば当たり前なんだけど、厚みが薄過ぎると製造できないよねー、っていう話と、仮に製造できたとしてもすぐ壊れるようなのはダメだよねーー、っていう話です。
例えば厚さ1ミクロンの服を作ってくれ!って言ってもそりゃ無理だろって話になるわけだけど、厚さ1ミリの指は許されるのか?というと、これは素材によるのです。
フルカラー石膏の場合はだいたい2ミリの厚さが必要で、0.6ミリくらいないと造形自体が難しいとされているっぽい。これだけ聞くと「なるほど、じゃあ太くしよう」となるわけだけど、これがそう簡単でもない。 なぜなら3Dモデルは自由に拡大縮小可能で、何も考えずに作ると実際の寸法はまず想定されておらず、ヤバい箇所はボロボロ出てくる。そして全体のバランスを大きく崩すことなくモデルを修正するとなると、例えば全ての手の指をくっつけたり、ひらひらしてるところの裏を埋めたりと結構モデルに手を入れることになる。今回は手足全体のパランスを見直してデフォルメ調を強めに調整し、服は辺に袖口をへこませたりせずまっすぐ埋める処理にしたり髪の毛先を丸めたりした。
しかし骨を入れてポーズを取らせたりすると、想定外のところが薄くなったりするため事前に手を打つことが困難で、そういうところはもうポーズを取らせた状態で固定したモデルを作成(ポーズを適用)して、しこしこ手で修正するしかないわけです。今回無理せずポーズで動かした範囲は小さかったのに、出てくるんですねこういうところが。もうやるしかないからやりましたよ。この作業はほんとつらかった……。
修正後最終版がこちら。
中空構造にして材料費用を浮かすテクニックもあるのだけど、もう私のSAN値はマイナスです!という状態だったのでやりませんでした。いろいろあったけど、しっぱいしたりもしたけど、わたしはげんきです。
Blenderは3Dプリントサポートツールいっぱい付いてました
ところで記事書いてるときに気付いたのだけど、最近のBlenderには3D Printing Toolboxなるものがあって、ユーザ設定で有効にすると体積・面積計算、モデル論理チェック、そして厚みチェックまでできて、まずいところを選択状態にすることができる超便利な代物があることに気付いた。「非多様体」ボタンに至っては自動でモデル修正もできるじゃないか!先に言ってくれ!!
Toolboxの厚みチェックや交差チェックなんかははちょっと怪しいところがあったりするけど、別の機能でメッシュ分析が入ってるので無問題。編集モードでNメニュー開くと下のほうにあるのでチェックを入れると、危さ加減でグラデーション色付き表示される。すごい。
あとグリースペンシルの欄にある3D定規で長さ測定もできる。ただ、どうも拡大縮小の使い方によって、Blender内部の縮尺とエクスポートされたデータの縮尺が合わないので、一旦Blender内で調整したあと、MiniMagicsなどで大きさを再確認して縮尺を合わせるのが必須っぽい。(本当はこういうことが起こらないように作業するのが良いのだけど、いつの間にかおかしくなっているものなのである……)
Blenderで3Dプリントやる人はすべからくこれらのツールを使うべき。
データ変換
フルカラーの入稿は、大抵PLYかVRM(+必要ならテクスチャ)なのだけど、今回はテクスチャを使わずマテリアルしか貼っていないからなのかなんなのか、Blenderから直接エクスポートすると色が付かない……。 しょうがないのでX3D形式で一旦出力して、MeshLabで開いて変換しました。この変換、だいたい問題ないのだけど、うっかり四角形が残っているモデルを変換したりするとポリゴンが欠けたりするので注意。
あと、Blenderからエクスポートするときは形式によってオプションがあって、出力方向の設定とか色々あるので「なんかよくわからん方向にモデルが勝手に回転するんですけど!」とかいう人(俺)はチェックしよう。
※ShapewaysだとX3Dでそのまま入稿できるのでこのへんは無問題だったりする
できあがり
まー書いてないこととかも色々あったけど業者はDMMにして、予定通り石膏フルカラー、造形の全体バランスの問題とサイズ感を考えて10cm高で注文。
そして待つこと1~2週間、来ました来ました!破損を心配していたけど、梱包は厳重だった。通常の小粒プチプチバッグにくるみ、更に外側に大粒のエアキャップでくるんであって多少箱を手荒に扱っても大丈夫な感じで配送されてきた。
ご開帳の結果がこれ。うてなが立った!
うつぶせの形にして出力したのだけど、その造形方向と直角に年輪のように層が見えるのがわかる。が、このくらいは充分許容範囲ですな。
発色も場合によっては境界が混ざったりズレたりするという話だったけど、ズレるのはテクスチャの場合だけかもしれない。マテリアルの色はかなりちゃんと出ているようだ。ビビッドな色がないのもあるけど、発色も問題なし。 脆い脆いと言われていたので強度も警戒していたけど、持っただけで折れるとかいう感じはなくしっかりしている。ちゃんと後処理してあるのだろう(自分でやる気にはならない)。
他業者との仕上り比較
このあとi.materializeにフルカラー石膏、rinkakにフルカラー樹脂で発注して、仕上りの比較を行ってみたりした。
左からi.materialize(フルカラー石膏)、DMM(フルカラー石膏)、rinkak(フルカラー樹脂)
i.materializeは仕上げにムラがあるっぽい?背面は磨きがかかってるのに前面がイマイチかかってなかったり、靴の部分に変なバリが残ってたり……。ちょっと再発注は考える感じだ。色味はDMMと比べるとちょっと赤っぽい感じ。これは好みかな。
- rinkakのフルカラー樹脂は、石膏よりも表面がツブツブ感あってザラザラだが、積層縞はなく、軽量&耐久性もありそうで良い素材の予感。色味は全体的に少し薄い感じ。表面と色味に納得できれば積極的に使っていきたい感じだ。
ちなみに各社とも梱包は厳重で、海外発送で手荒に扱われても問題ない感じでした。(i.materializeのとか、箱へこんでたけど大丈夫だった)
そして次は
SAN値不足で断念した衣装関係はやるとして、次の段階としてUnityで動かしたいなぁ……そしてOculusでVR空間でモデルの動きを見たいなぁ……と思っているのだけど、そのためにはモデルを自由に動かすためにボーン設定関係(とそれに対応するモデルのコツ)に精通しなければならない。
俺たちの戦いはこれからだ……!!
だいぶ前から3Dには手を出したいなぁ、と思っていたのだけど、まずモデリングができない。ということでそこから勉強を始めて、そして……ずいぶんと時が流れてしまった。
この記事はモデリングから始めて、最終的に3Dプリントで物体を作るところまでを順を追って回想していく、体験記の類いである。何かの参考になるかもしれないので記録として残しておく。
つくるもの
そもそものきっかけは、ここのところ細胞彼女というアイドルさんに割とハマっていて、ファン作品として何か作れないかなぁという想いが出発点だった。
そういうわけなので作るものは、細胞彼女こと うてなゆき の自画像を元に立体に起こすという方向に安直に決定。 (※細胞彼女のアートワークは全てうてなゆき本人が手がけています)
なお細胞彼女については、公式サイトや視聴・試聴ページ、うてなゆき公式blog:塩素で昇天などでチェックされたい。アイドルに興味がない向きにも、面白い音楽性や、うてなゆきの謎の多趣味感などひっかかるものがあるかもしれないので是非一聴頂ければ幸いである。
モデリング
さて、なにはともあれ3Dモデルを作らなければ何事も始まらない。でもどうやって作るの?3D制作ソフトは結構お高いんじゃないの?とか色々普通は思いますよね。
でも大丈夫!我々にはBlenderがある!貧乏人の妖刀村正ことBlender先生その人である(今勝手に付けた)(そして人ではない)。完全無料で機能が死ぬ程豊富!初心者には向かないとか学習が難しいとか言われているけど、壁を越えていくのが楽しいんじゃないか……!と無駄に熱血して即決。
※……結論から言うと、ショートカットキーを駆使したり設定を弄くり回すのが許容範囲(むしろ大好物です)な人でないとBlenderは厳しい、かもしれない。まー設定はともかく、ショートカットキーはどんな3Dソフトであっても使いこなさないとまともに作業できないような気がするけども……。(設定についてはこのへんなどを参照した。あとUI設定のあたりはマウス位置にズームとか便利な設定も多いので、色々試して使いやすくするよろし)
で、モデリングのやりかたの勉強を始めた。まずはBlender入門でてんとう虫を作って基礎を勉強。ここまで親切に書かれていると流石にちゃんと作業できるものである。 ここで学んだことは、だいたい次のあたりかな……。
- どんなモデルでも、立方体とか基本図形を分割したり伸ばりたりして構築していくのが普通
- 左右対称のモデルは半分だけ作ってミラーする (あとで実体化もできる)
- とにかく面を4角形にしておけば、なんぼでも後から編集できる(だから4角形以外作ってはいけない)
- おおざっぱな荒いモデル(ローポリ)を作れば、あとは半自動で細かいモデルに変換したりできる (ただし4角形に限る)
- ショートカットキーを覚えないと話にならない (まず視点変更と各モード切り替え、それから各種操作メニューの出し方は必須)
しかし使ったそばから忘れていくショートカットキー……。いや、そのうち慣れるだろう!と思い、本番データの制作にとりかかった。
(※実はここで体調不良などで3ヶ月くらい間が開いており、以下は急に思い立って2週間くらいの急ピッチで仕上げた成果である)
ところで、てんとう虫は人ではない。従っててんとう虫の作り方に精通したところで、人は効率的には作れないのである。特に顔とかどうやって作るんだ……?というわけで次なる参考サイトを求めた。
ちょっとBlenderのVer.は古いのだけど、妖精館さんでひとしきり勉強した。体、顔、手とひと通りそろっているので大変参考になった。というかこのまんま作業した。体とか手とかは特に疑問が出ることもなくスムーズに、なるほどー効率的ー とか言ってる間にできた。問題は顔ですよ。
顔の下絵は次のような下手糞なものを自作。コレジャナイ感はしょうがない!絵心のなさに自分で詫びながら作業を進めた。
面張りして大体できたぞの図。なんとなくいい感じだが、実はこのモデルには問題がある……。
上から見た下絵がなかったことにお気付きだろうか。通常、立体の図面というのは正面、横、上から見た三面図がなければ正確なものはできない。しかし二面しかない図で制作を進めてきた。その結果どうなるか……?斜めから見た図とかがおかしくなるのです!!(おかしくなった図は割愛)
まーどっちにしろ、下絵の時点で3次元的に正確なものを書くなんてことは、出来上がりの立体物が完全に頭の中に出来上がってないとできないので凡人には無理であって、我々にできることはひたすら修正を続けることだけなのだ……。凡人は汗をかくことでしか前に進めないのだ……。
とはいえどう修正すべきかの指針は必要なので、手元にあるねんどろいどをガン見して修正した。具体的には頬と目の位置関係とか鼻の造作とかを全体的にパ……参考にした。とにかく頂点を弄っては線を滑らかに調整。頂点を前に後ろに右に左に、あらゆる角度から見て滑らかになるように、とにかく細かく調整。色々やったあとに「頂点スムージング」なる機能に気付いたけど、これも万能ではないので結局手動で調整……。SAN値をここでちょっと削られました。
髪は今回はほぼ球に近いので、適当にUV球(カクカクした球体)を分割数少なめにして下半分を切り落し、裾を伸ばしたりして被せた。OKOKいけるいける!(もう疲れてる)
その後、クッソ適当にTシャツと靴を作ってそれっぽく仕上げる。本当はちゃんとした衣装を作り込みたかったけどモチベーション優先。合言葉はラピッドプロトタイピングです。なんか足が長いのは調整不足です。大丈夫、残念なことに調整はまだ死ぬ程必要なんだ……。SAN値を減らすのはここじゃない。
ポーズを付ける (リギング)
いつまでもT字ポーズというのもアレなので、ポーズを付けよう。じゃあ何が必要かというと、骨とかボーンとかアーマチュアとかいうものを作って、それとモデルを紐付け、あとは自由にポーズを付けたらはい完成、という寸法らしい。参考ページはここ。
なんだけどこれがまた大変面倒くさい。骨とモデルの対応を自動(モデルと骨を選択してCtrl+P)で付けるとき、全ての骨の近くに頂点が無いと失敗して自動処理が一切できない。細身のモデルなら問題ないのだろうけど、デフォルメキャラだと割とこのエラーが発生する気がする。
しょうがないので一旦エンベロープ(骨からの一定距離にあるものを対応する頂点とみなすやつ)でうまく対応が取れるよう設定して、エンベロープを元にして頂点グループを作成し、細かい変なところ(右足の骨なのに左足が影響されるとか)はウェイトマップ編集モード(モデル選択してCtrl+Tab)で修正した。全手動よりは遥かにマシ。
(※たぶん、骨の数とかを調整すればなんとかなったのかもしれないのだけど、どれが原因か判然としないし関節数を減らすわけにもいかなかったりして、途中で考えるのが面倒になりました……)
ところでこのへんから、モディファイアを適用していったりして不可逆な操作をし始めるので、適用前のデータを何らかの形で残しておくと不幸を回避できるかもしれない。オブジェクトコピーとか、物理的にファイルを分けるとか。たぶん、慣れない内は適用前に戻って修正することが結構あるので……。
(ちなみにBlenderは、複数ウィンドウ開いてウィンドウ間でコピペができるので、ファイルを分けて部分的に差し替え、なんてことが簡単にできます。素晴しい。)
また、かなりあとで気付いたのだけど、ボーンの名前末尾をLとかRとかにすると左右の骨をうまいこと対称にしたり、ウェイトマップも左右対称にしたりする機能がこの作業のときうまく動いてなかった。原因はボーンの名称がまずかったため。「手L」とかではなく「手.L」という風にきちんと区切りがわかるようにしてやらないといけないようだ。
3Dプリント
とりあえずそれっぽいモデルができた!というわけで3Dプリント業者を探す。 3Dプリンタが騒がれたのも結構前だし、そろそろ技術が安定してきたのでは、とか思ってたのだけど、今まさに日進月歩という感じで技術も業者も群雄割拠の状態だった。
そして調べてすぐわかったのは、3Dプリンタの方式と素材は様々で、それらによって納期も値段も精度もまちまちであり、そして自動で色が付くものはかなり限られているようだ。 (ちなみに入稿形式もプリンタの種類によって様々なのだけど、だいたい変換可能なのであまり問題にはならない。いや、変換時に微妙にモデル破損が発生したりするので油断はできないのだが……)
3Dプリント業者いろいろ
大半の業者はオンライン入稿可能で、モデルチェックや見積りまで自動の場合もある。APIも公開されていたりする(それは別の話なので割愛)。
どこがいいのかわからなかったので、以下はやたらめったら見積りを出してみた結果の感想です。フルカラーで出したかったので、フルカラー石膏対応できる会社中心。
- 見積: 自動か手動か。自動はその場、手動はモデルチェックもして営業時間に返してくるので、通常半日くらいかかる。
- モデルチェック: 厳しく厚みチェックされるかどうか。(※全社論理的に問題のあるモデルは弾くので、ここでは物理的な強度のチェックを指します)
- 種類: 選べる主な素材(確認時点。随時追加されているかも)
- ショップ: 自社ショップを持っていてそこに出品できるか。
色々やって思うのは、値段は見積り出してみるまでわかんないし、仕上りも作ってみないと正直よくわからん、という感じです……。仕上がりについてはこの項ではなく後述。
Shapeways
実は今回使ってないんだけど、この後の発注で使った業界最大手のここは外せない。3Dプリンタ初心者には大変有り難い、色々自動でやってもらえる業者。 英語のサイトしかないのは人によってネックかもしれないが、とにかくあらゆる面で他業者の追随を許さないレベル。超お薦め。
自動化できるところは最大限自動化されていて、モデルをアップロードしてその場でモデルチェック、金額もその場でわかるので大変助かる。なんとモデルのどこが危ないかの素材別チェックまで自動でやって、結構見易く提示してくれる。ここまで一気にやってくれる業者は他にないのでは?
メールでの連絡などもかなり密。発注が今、処理中なのか、チェック中なのか、製造中なのかといった細かい点まで開示してくれているのはかなり好印象。製造完了時に「今後製造するときも安定して作れるよ!」という通知が来たのには驚いた。でも販売するなら重要だよなぁ製造精度は。 サービス面ではこういう細かい気遣いが大切だと思う所存。
見積りまでは全自動なので、とにかく一度使ってみるのが吉。(とりあえず日本語が通じる業者で!と今回日和ってしまい使わなかったのを、今は後悔しています)
- 見積: 自動
- モデルチェック: 精密、多少ヤバくても無視して製造可 (Print it anyway)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(ナイロン、アクリル、透明アクリル、伸縮性素材)、金属(メッキ、真鍮、スチール、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ)、陶磁器
- ショップ: あり (見積後すぐ出せる)
- その他: 一定条件で使えるクーポンをよく発行してる
i.materialize
ベルギーの会社だけど日本法人がある模様。3Dプリンタ初心者には大変有り難い、色々自動でやってもらえる業者その2。
ここもモデルをアップロードしてその場でモデルチェック、金額もその場でわかる。モデルの厚みチェックは、アップロード後に別ページで依頼すると出る感じなので、やや手間(というか気付かない)かもしれない。
料金は割と安いです。送料無料だし。ただ製造が日本じゃないからか、納期は長めでだいたい2~3週間。金属加工としては早めかも。
- 見積: 自動 (サイズ変更可能)
- モデルチェック: ゆるめ (ただし厚みチェックサービスあり)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(ポリアミド、アルマイド、高精細樹脂、透明樹脂、ABSライク、ゴムライク)、金属(チタン、スチール、シルバーゴールド、プライムグレイ、真鍮、ブロンズ、セラミック、ステンレス(高精細)、コッパー)、ウッドライク
- ショップ: あり (注文後に出品可能)
- その他: 日本国内送料無料、石膏はグロス仕上げ、マット仕上げ選択可能
DMM.make
この会社が!?という業者第一弾。言わずと知れたエロの殿堂、いや艦これの運営などをやっている会社。実は国内では3Dプリント大手です。
ここも送料無料でそこそこ安く、いい感じなのだけど、最近からなのかモデルチェックがなかなか厳しめです。エクスプレスサービスで早めに仕上げてもらうことも可能(ただし値段が1.5倍くらいになる)。通常納期は石膏樹脂系が1~2週、金属系は2~4週。
ハマりポイントとして、出力素材は見積り時に向こうで判定されるので、この素材が使いたいんです!と思っても向こうがムリだと思ったら選択できない。そしてどのくらいのモデルにしたらOK出してくれるのか結構曖昧なところがあるので、ハマるときは凄いハマります(ハマりました)。一応コメントは付くんだけど、「薄い点があります」とか1行しか書いてないからさっぱりわからんのですよ……。
- 見積: 手動
- モデルチェック: 厳しめ
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル(高精細モードあり)、ナイロン、ABSライク、ゴムライク)、金属(アルミ、チタン、真鍮、シルバー、ゴールド、プラチナ、エルマージング鋼、インコネル)
- ショップ: あり (見積後すぐ出せる)
- その他: 製造可能な素材は向こうが判定する(指定できない)、造形サイズは入稿データそのままになる(変更できない)
rinkak
雑貨メインな雰囲気のおしゃれ感のあるところ。ここは数少ないフルカラー樹脂を(トライアルだけど)扱っています。石膏フルカラーだと脆いけど、樹脂フルカラーならちょっと強いぞ!石膏より軽いし材料費も安いっぽいぞ!
全体的なお値段設定はちょい高めの印象。ただしナイロン(ポリアミド)の磨きありだけ異様に安い(磨きなしは高い)。なにこれ?と思って問合せたら「キャンペーン価格です、ただし告知はしてないし終了時期も未定」と回答。どういう意図なのこれ……?ちなみにモデルチェックはガバガバなので、破損覚悟で造りたい人に便利っぽい。ここも上級者向け感ある。
納期は素材によってまちまちだが、石膏と樹脂系は1~2週間、それ以外の金属などは3~4週間というところ。このぐらいの納期が普通っぽいですね。
- 見積: 自動
- モデルチェック: ゆるい
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル、ナイロン、ABSライク、フルカラー樹脂、アクリル樹脂(歯科用途)、セラミック合成アクリル)、金属(チタン、ステンレス、ブロンズ、シルバー)、ウッドライク
- ショップ: あり (見積後すぐ出せる)
- その他: 試作以外はアメリカでの生産が可能で、値段が国内より安い(為替レートによる)
キンコーズ
この会社が!?という業者第二弾。全国の大学院生及び同人作家にはお馴染みの印刷所。いや印刷の会社だし3Dプリントは割と順当なのかもしれない。
どうも品川店にのみ3Dプリンタがあって、そこで対応している模様。モデルチェックの結果をPDF形式で教えてくれたり、先に見積りしましょうか?と提案してきたりするので、なかなか親切な感じあり。ただ、「よく見たらこっちも危いの見落してました!てへぺろ」みたいな文章が来たりしたので、ご愛嬌な感じもあったりなかったり。人間味がある。
石膏フルカラーで基本料金5000円など、結構料金高めの印象。ただ、大きめのモデルを頼んだ場合は他の業者と比べてどうなるかはわからない。納期は1週間以内とかなり早いほうと考えると、そういう値段と割り切るべきかも。
- 見積: 手動
- モデルチェック: 普通 (親切)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル、エポキシ、ナイロン)
- ショップ: なし
- その他: 見積時はサイズ指定できる
3Dayプリンター
とりあえずググったら一番最初に出てきた業者。なんかとにかく早く仕上げてくれ、みたいな要望にも応えてくれるらしい。自社で機械を持たず、手すきの協力会社に依頼して仕上げてくれる、中間業者みたいなところのようだ。そのため対応素材は異様に多い。
とりあえず最初に見積りを依頼したのはここなんだけど、うっかり納期を短くしたためかかなり高い金額で出てきた。実際に請け負う会社の都合とかにもよるかも。
少人数の会社のようで資本少ない感あり。アップロード制限が2MBとか超小さくてやる気あんのかという感じもあるけど、たぶんファイル保管するための領域が確保できないんだろうな、という事情が忍ばれます……。 そのかわりデータ作成や後処理などかなり色々な要望を聞いてもらえるみたいなので、金に糸目はつけずコンサル的に動いてもらうには良いサービスなんじゃないかなと思います。(自分でやるので使いません)
- 見積: 手動
- モデルチェック: 普通 (親切)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(アクリル、ポリプロピレン、ABSライク、ゴムライク、透明、エポキシ、ナイロン、フルカラー樹脂)、金属(たぶん色々いける)、紙(フルカラー)
- ショップ: なし
- その他: 見積時はサイズ指定できる、その他よろず相談可能
INTER-CULTURE
最後のほうで参考に見積を出したので、あんまり感想はなかったり。材料一覧に素材毎の特性をマトリックスで出しているのは好印象。納期は通常2週間以内で、早くするオプションもある模様。
- 見積: 自動 (フルカラー石膏、アクリル、ウッドライクは手動)
- モデルチェック: 不明 (他でチェック後に出したので)
- 種類: フルカラー石膏、樹脂(ABSライク、透明エポキシ、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル、ゴムライク)、ウッドライク
- ショップ: なし
- その他: 学割など割引サービスあり
3Dプリントのためのモデル調整
ここは地獄の一丁目だ。とりあえずフルカラー石膏での出力を目指すのだけど、3Dプリントするためにはクリアしなければならない制約が2つある。論理と物理だ。
1. 論理的に造形可能であること
言われてみれば当たり前なんだけど、体積(厚み)がないと物としては製造できないよねーという話。
体積があるとはどういうことかというと、具体的にはデータとして次の3点をチェックする。
- ポリゴンが閉じているか (穴が開いてないか)
- ポリゴンが裏返っていないか (なんとポリゴンには向きがあったのだ)
- 複数のオブジェクトに分かれていないか (ひとつながりのワンピースでないと駄目なのである)
例えばペラペラのTシャツが体のまわりに浮いている状態は駄目だし、頭と耳を別々に作って重ね合わせてたりするのも駄目です。統合する必要がある。
これらをチェックするために無料で使えるツールとして、MiniMagicsとnetfabb Basicがよく使われるようだ。自動修正機能は流石に無料では使えないけども。 (ちなみに後述するが無料で使える自動修正ツールは存在した)
今回は普通にパーツ毎に作っていたので、次のような手順で統合を進めた。
- 各パーツ毎に、上の論理チェックを行って修正する (パーツ単位で、製造可能なモデルにする)
- 各パーツを、最終仕上げレベルの分割数にする (細分化をモディファイアでしている場合は適用してしまう)
- ベースとなるオブジェクト(体など)をコピーして、統合用のベースパーツとする
- ブーリアンモディファイアの「統合」を使って、ベースパーツにどんどん別のパーツを足していく (モディファイアを適用して、モデルを実際に変更してく)
分割を先にやってしまうのは、統合すると境界線が三角形でムリヤリ結合した感じになり、ループ分割や細分化ができなくなるから。あとで気付くと結構困る。
最後のブーリアンモディファイアがキモで、完全に自動でパーツの統合ができるので超絶便利。ただしパーツに論理的におかしなところがあると、結果が意味不明になったりするので注意が必要だ。 そして複雑なモデルだと謎のエラーを吐いて失敗したりするので、結構この作業はハマる。統合していく順番によってOKだったりするので、エラーが出たときは素数を数えて落ち着いてから、ベースパーツから作り直して適用順番を変えてみたりするとうまくいったりする。
もしかしたら統合後にモデルがおかしくなっている可能性もあるので、統合する度にモデルチェックはかけたほうがいいかも。多過ぎる頂点を減らしたりも効果があるかもしれない。
よくあるのがオブジェクト内部にスキマ(中空構造)ができている場合。こういうのはZキーとかでワイヤフレームモードにして、適当に削除しましょう。 一部選択→Ctrl+Lで地続きを選択すると楽に作業できる。
2. 物理的に造形に耐えられること
これも言われてみれば当たり前なんだけど、厚みが薄過ぎると製造できないよねー、っていう話と、仮に製造できたとしてもすぐ壊れるようなのはダメだよねーー、っていう話です。
例えば厚さ1ミクロンの服を作ってくれ!って言ってもそりゃ無理だろって話になるわけだけど、厚さ1ミリの指は許されるのか?というと、これは素材によるのです。
フルカラー石膏の場合はだいたい2ミリの厚さが必要で、0.6ミリくらいないと造形自体が難しいとされているっぽい。これだけ聞くと「なるほど、じゃあ太くしよう」となるわけだけど、これがそう簡単でもない。 なぜなら3Dモデルは自由に拡大縮小可能で、何も考えずに作ると実際の寸法はまず想定されておらず、ヤバい箇所はボロボロ出てくる。そして全体のバランスを大きく崩すことなくモデルを修正するとなると、例えば全ての手の指をくっつけたり、ひらひらしてるところの裏を埋めたりと結構モデルに手を入れることになる。今回は手足全体のバランスを見直してデフォルメ調を強めに調整し、服は変に袖口をへこませたりせず真っ直ぐ埋める処理にしたり髪の毛先を丸めたりした。
しかし骨を入れてポーズを取らせたりすると、想定外のところが薄くなったりするため事前に手を打つことが困難で、そういうところはもうポーズを取らせた状態で固定したモデルを作成(ポーズを適用)して、しこしこ手で修正するしかないわけです。今回無理せずポーズで動かした範囲は小さかったのに、出てくるんですねこういうところが。もうやるしかないからやりましたよ。この作業はほんとつらかった……。
修正後最終版がこちら。
中空構造にして材料費用を浮かすテクニックもあるのだけど、もう私のSAN値はマイナスです!という状態だったのでやりませんでした。いろいろあったけど、しっぱいしたりもしたけど、わたしはげんきです。
Blenderは3Dプリントサポートツールいっぱい付いてました
ところで記事書いてるときに気付いたのだけど、最近のBlenderには3D Printing Toolboxなるものがあって、ユーザ設定で有効にすると体積・面積計算、モデル論理チェック、そして厚みチェックまでできて、まずいところを選択状態にすることができる超便利な代物があることに気付いた。「非多様体」ボタンに至っては自動でモデル修正もできるじゃないか!先に言ってくれ!!
Toolboxの厚みチェックや交差チェックなんかははちょっと怪しいところがあったりするけど、別の機能でメッシュ分析が入ってるので無問題。編集モードでNメニュー開くと下のほうにあるのでチェックを入れると、危さ加減でグラデーション色付き表示される。すごい。
あとグリースペンシルの欄にある3D定規で長さ測定もできる。ただ、どうも拡大縮小の使い方によって、Blender内部の縮尺とエクスポートされたデータの縮尺が合わないので、一旦Blender内で調整したあと、MiniMagicsなどで大きさを再確認して縮尺を合わせるのが必須っぽい。(本当はこういうことが起こらないように作業するのが良いのだけど、いつの間にかおかしくなっているものなのである……)
Blenderで3Dプリントやる人はすべからくこれらのツールを使うべき。
データ変換
フルカラーの入稿は、大抵PLYかVRML(+必要ならテクスチャ)なのだけど、今回はテクスチャを使わずマテリアルしか貼っていないからなのかなんなのか、Blenderから直接エクスポートすると色が付かない……。 しょうがないのでX3D形式で一旦出力して、MeshLabで開いて変換しました。この変換、だいたい問題ないのだけど、うっかり四角形が残っているモデルを変換したりするとポリゴンが欠けたりするので注意。
あと、Blenderからエクスポートするときは形式によってオプションがあって、出力方向の設定とか色々あるので「なんかよくわからん方向にモデルが勝手に回転するんですけど!」とかいう人(俺)はチェックしよう。
※ShapewaysだとX3Dでそのまま入稿できるのでこのへんは無問題だったりする
できあがり
まー書いてないこととかも色々あったけど業者はDMMにして、予定通り石膏フルカラー、造形の全体バランスの問題とサイズ感を考えて10cm高で注文。
そして待つこと1~2週間、来ました来ました!破損を心配していたけど、梱包は厳重だった。通常の小粒プチプチバッグにくるみ、更に外側に大粒のエアキャップでくるんであって多少箱を手荒に扱っても大丈夫な感じで配送されてきた。
ご開帳の結果がこれ。うてなが立った!
うつぶせの形にして出力したのだけど、造形方向と直角に年輪のように層が見えるのがわかる。が、このくらいは充分許容範囲ですな。
発色も場合によっては境界が混ざったりズレたりするという話だったけど、ズレるのはテクスチャの場合だけかもしれない。マテリアルの色はかなりちゃんと出ているようだ。ビビッドな色がないのもあるけど、発色も問題なし。 脆い脆いと言われていたので強度も警戒していたけど、持っただけで折れるとかいう感じはなくしっかりしている。ちゃんと後処理してあるのだろう(自分でやる気にはならない)。
他業者との仕上り比較
このあとi.materializeにフルカラー石膏、rinkakにフルカラー樹脂で発注して、仕上りの比較を行ってみたりした。
左からi.materialize(フルカラー石膏)、DMM(フルカラー石膏)、rinkak(フルカラー樹脂)
i.materializeは仕上げにムラがあるっぽい?背面は磨きがかかってるのに前面がイマイチかかってなかったり、靴の部分に変なバリが残ってたり……。ちょっと再発注は考える感じだ。色味はDMMと比べるとちょっと赤っぽい感じ。これは善し悪しというより好みによるかな。
rinkakのフルカラー樹脂は、石膏よりも表面にツブツブ感があってザラザラだが、積層縞はなく、軽量&耐久性もありそうで良い素材の予感。色味は全体的に少し薄い感じ。表面と色味に納得できれば積極的に使っていきたい感じだ。
ちなみに各社とも梱包は厳重で、海外発送で手荒に扱われても問題ない感じでした。(i.materializeのとか、箱へこんでたけど大丈夫だった)
イカ
ここまでは細胞彼女1stワンマンの時期にあわせて急ピッチで作業していて、急ピッチすぎて1ヶ月くらい余裕を持ってフィニッシュできていた(というか安全のために取っていたバッファ期間を殆ど使わなかった)。
やった間にあったー、という感じだったのだけど、ここで色々な、やんごとなき事情により公演祝いのスタンドフラワーの為の飾りを自作する必要が出た。すわ、今こそ新しい技術を投入するとき!とばかりに立候補して作業を開始。
※覚えたてのことをすぐ使いたがる中学生の心境と思って頂ければ大体合っています
時間がなかったのでデザイン案は1日で仕上げ。安定の低クオリティ画。色々なイカをパ……参考にした。
モデルは動かさない前提なので、モデリングは3日で完了。めっちゃ普通に立方体を割ったり膨らましたりしたらほぼベース完成。足生やすところなどは、手を作った経験がだいぶ生きた。 今回はフルカラーではなくナイロン素材で1色にするつもりだったので眼の表現はどうしようかと思ったのだけど、黒描画部分を凹ませて表現することにした。凸にすると横から見ると変になるので回避。この部分はパーツを分けて面張り⇒厚み付けし、ベースとブーリアンで差分を取ったらサクっと完成。パーツ統合は上手く使うとかなり便利だと思う。
背面は強度を保ちながらできるだけ凹ませた。コスト削減!コスト削減!
業者はフィギュアのほうでは使わなかったShapewaysを使ってナイロン(紫染め)で発注。前述の通り感動のサービスクオリティを体感した。1週間でモノが届くというスピーディな感じでフィニッシュ。
ナイロンは思ったよりずっしりした感じで、叩くと金属か陶器のような高い音がする感じ。再現性もよく初心者にお薦めの素材というだけある。
よく見ると紫のワイヤーで吊るされてます。ちなみにメッセージ部分はrinさん (@rin_otokodesu)、ピカチュウはその奥さんが担当。本当にお疲れ様でした。
そして次は
SAN値不足で断念した衣装関係はやるとして、次の段階としてUnityで動かしたいなぁ……そしてOculusでVR空間でモデルの動きを見たいなぁ……と思っているのだけど、そのためにはモデルを自由に動かすためにボーン設定関係(とそれに対応するモデルのコツ)に精通しなければならない。
俺たちの戦いはこれからだ……!!